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最高裁判所第三小法廷 昭和47年(オ)110号 判決

主文

理由

上告代理人涌井鶴太郎の上告理由第一点(1)および(2)について。

原審が確定したところによれば、昭和三四年一月一二日上告人被上告人間において、被上告人が上告人に対し一〇〇万円を貸し付け、これと同時に、上告人は被上告人に対し右と同額の定期預金をする旨約され、一〇〇万円の各占有の移転は占有改定と簡易の引渡によつてされ、しかも、同日、被上告人から上告人に対し定期預金証書が交付されたというのであり、この認定は原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係に照らして肯認することができる。原判示中所論括弧書きの部分は、右定期預金の預金者が渡辺太郎名義であつたことから付加されたものであつて、預金者は上告人であるとする前示認定と直ちに矛盾するものとはいえない。そして、原審の認定した右事実関係のもとにおいては、本件消費貸借契約は、その成立要件たる要物性に欠けるところはないと解すべきであり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。所論は、原審の認定にそわない事実を前提に原判決を攻撃するか、右と異なる見解に立つて原判決の違法をいうものにすぎない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同(3)について。

所論は、原判決の結論に影響のない点について違法をいうものにすぎない。したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用するに足りない。

同(4)について。

記録に徴し本件訴訟の経緯にかんがみれば、原審が所論の申請を排斥したことをもつて違法ということはできない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 田中二郎 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝)

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